キカイに殺された男 (1)

皆さんは在宅医療システムをご存じだろうか?

近年は医療システムの発達から医療機関で使用される器具も安価で使いやすいものが多くなってきて、専門的な医療器具も以前に比べれば、格段に安くなっている。

しかしながら、その医療器具を受け入れる病院は、医療が発達した今でも多くの問題を持ち続けている。その一つが個別病室を進める動きである。
これは数人が一つの部屋で治療を受けるいわゆる大部屋のシステムに代わり。病室はひとり一部屋で治療する方法でプライバシーが大部屋に比べて守られているので、患者は余計な心配をしなくて済むなど治療効果が高くなっている。

しかしながら、入院患者数は増加傾向にあるため病院は簡単に病棟を建設することはできない。そのためひとりあたりのスペースの少ない大部屋の病室がいまだに多いままである。

そこで考え出されたのは、在宅医療システムである。

集中治療室などの高度な医療を必要とせずに、点滴や投薬、定期的な検診や、人工呼吸器などは比較的スペースは少なく、大部屋にもおけるような機器を今までも使用していた。そこでそれらの治療器機を在宅用にレンタルして、オンラインで問診や投薬の選定を行い、治療器機が薬剤の調合を行い、輸液の調整、なども可能である。

食事もあらかじめ病院から食事内容の指示が数日おきに送られてくる。家族はそれを元に食事を作るか、あるいは宅配サービスと連携しているので、食事の少し前に毎回管理された食事が送られてくるようになっている。

この在宅医療システムは、家族の面会が病院ではある程度制限されていたり、家族が会いに来る負担も無くなるので予想以上の治療効果が高い。
そして、患者の容態は定期検診や治療器機の各センサーが病院と連携していて、
もし何らかの異常を発見すれば、すぐに連絡が届くようになっていて、病院側からのコントロールで、投薬を行ったり、その場でできる指示を出すことや、
救急車の手配など一貫したシステムが作り上げられている。
救急車の搬送時間はかかるもののもし異常が発見されて緊急手術が必要と判断しても、一般の病棟にいる場合とさほど大きな時間の差もなく手術は可能である。


そして、自宅の別途で横になっている、大岩隆もその在宅医療を受けているひとりである。
大岩は3年前に肺ガンのために左肺を切除している、そのため常時人工呼吸器による呼吸の補助が必要としていたなか、肝機能障害を起こし入院、その後の経過が順調なため在宅医療に変更されている。

しかし、大岩は8月6日午前2時頃、人工呼吸器の突然の停止により死亡した。
在宅医療システムはそれまで正常に病院へデータを送っていたが以上を知らせる通信をせずに、正常値を示す誤ったデータを送り続けていた。

そして、在宅医療システムのモニターには黒い文字でRNAとだけ表示されていた。